赤川次郎の文楽入門―人形は口ほどにものを言い (小学館文庫)のレビュー

文楽が見たくなる
文楽初心者にお勧めです.
人形劇がなぜおもしろいのか?歌舞伎との違いは?という初心者の質問に分かりやすく答えてくれる本です.
作家ですから文章もうまく,あっという間に読み終えます.さまざまな演目も紹介されています.
広い視野からの素晴らしい文楽案内
残念ながら赤川次郎さんのご本業、推理小説は全くと言っていいほど読んだことはありませんが、オペラを中心としてクラシック音楽にもご造詣が深いことは存じ上げておりました。その方が今度は文楽というので、まあ素人見聞録くらいかと読み始めましたら、これが並みの入門書(風)の本よりもはるかに面白いのです。さすが作家だけにコンパクトにわかりやすくストーリーを説明しながら見どころを示すあたりは、類書を超えています。加えて、歌舞伎、演劇、オペラ等々との比較を交えながら、伝統芸能としての行く末を本気で心配し、数々の苦言・提言をされていますが、いずれも的確な指摘のように感じます。例えば大夫さんの言葉は聞き取りやすくするべしというところはまったくの同感で、その点で昔の若太夫さんや先代の津大夫さんは床本に目を落とさなくても子供でも聞き取れました。オペラのように字幕を付けるというアイディアも「あり」かも知れません。もう亡くなってしまった玉男さんはじめ、ベテランの方々への気遣いは、文楽に対する著者の愛情が伝わってきます。ただ、これを読んでおりますと、昔の文楽座・朝日座しか知らず、最近の舞台は見ていない私には、10時間を越える遠しを、狭い席で弁当も食べずに聞かされるというのは地獄の責め苦です。。。